変形性ひざ関節症について
「変形性ひざ関節症」は、加齢に伴い起こるひざの病気で、発症には体重や運動、姿勢などの生活習慣が関連していると考えられています。「変形性ひざ関節症」について正しく理解しましょう。
「変形性ひざ関節症」はひざの関節の軟骨や半月板や軟骨の下の骨(軟骨下骨)が傷つくことで、関節に炎症が起こり痛みが生じる病気です。やがてこれらの組織が傷むと動かしたときの衝撃が吸収できなくなり非常に強い痛みを生じます。日常生活に伴うひざの痛みの原因の多くは「変形性ひざ関節症」と考えられており、50歳代以上の男女、特に女性に多く、40歳代から徐々に増え始めます。また、60歳代の女性の約40%、70歳代の女性の約70%1)がこの病気にかかっていると考えられています。
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- 古賀 良生 編集: 変形性膝関節症-病態と保存療法. 南江堂,2008
「変形性ひざ関節症」にかかると、ひざの痛みのためあまり歩かなくなり、脚の筋肉が衰えていきます。ひざを守っている筋肉が衰えるとさらにひざに負担がかかります。

主な症状は「痛み」「腫れ」「硬く動きづらくなる」です。

「変形性ひざ関節症」の主な症状は、ひざを動かしたときに生じるひざの痛みです。最初は、立ち上がるとき、歩き始めるときなど、ひざに体重がかかりやすいときに痛むことが多く、もう少し進行すると階段の上り下りのとき、正座したときなど、特別な動作をしたときにも痛みが生じるようになります。じっとしていると痛みが軽くなりますが、病気が進行していくと安静時でも痛みがとれないことがあります。

関節に炎症が起こり、ひざのお皿の周辺に関節液がたまります。関節液がたまるとひざが腫れて、痛みが生じたりひざが動かしにくくなったりすることがあります。

正座やしゃがむなどのひざを曲げる動作が難しくなったり、ひざを伸ばすことが難しくなったりします。また、歩き始めるときに横にぶれることがあります。
複数の原因が存在しており2)、長い期間ひざに負担がかかることで、ひざの関節でクッション機能を果たしている軟骨や半月板に傷がつくことが原因と考えられています。
ひざに負担がかかる期間が長くなると、「変形性ひざ関節症」を発症しやすくなります。
人が歩くときには、体重の約3.1倍の負荷がひざにかかります。例えば、体重が60kgの人では約180kgの負担がひざにかかっていることになります。体重が重いほどひざに負担がかかりやすく、軟骨や半月板が傷つき発症しやすくなります。
猫背など歩く姿勢が悪い場合には、普通の姿勢で歩くときよりさらにひざへの負担が大きくなり、発症しやすくなります。また、日本人に多いO脚はひざの内側に体重がかかることが多くなり、内側の軟骨が傷つき痛みを発症することがあります。
運動不足で脚の筋肉が衰えてくるとひざに大きな負担がかかってしまい、ひざの関節でクッションの役割をしている軟骨が傷つき、ひざを動かしたときの衝撃が吸収できにくくなって痛みを生じます。
女性に多く発症することが分かっています。理由は明らかになっていませんが、閉経などホルモンのバランスも影響していると考えられています。

40歳以上の変形性ひざ関節症の有病者数は約2,530万人3)います。発症の原因としてはさまざまなことが考えられますが、高齢化とともに患者さんの数も増えてきています。いままでは年のせいだからとあきらめてしまっていた方が多かったのですが、最近では積極的に治そうと病院にかかる方も増えてきています。40歳を過ぎたら誰もがかかる可能性があるとても身近な病気です。過去にひざにけがをした経験のある方や運動不足になりがちな主婦の方、デスクワークの多い方、姿勢の悪い方、太り気味の方などは注意が必要です。

1) 古賀良生編集: 変形性膝関節症-病態と保存療法. 南江堂,2008
2) 都民公開講座 高齢者と膝関節痛 順天堂医事雑誌.2013,59 P.139
3) 吉村典子: わが国における変形性関節症の疫学~大規模住民コホート研究ROADより~.
Clinical Calcium 21(6):821-825, 2011
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