ひざの痛みと生活習慣病
放っておくと心筋梗塞や脳卒中などを引き起こすとして、予防の重要性が叫ばれるメタボリックシンドローム。腹部肥満に、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が重なった状態のことです。厚生労働省の調査によると、メタボリックシンドロームとその予備群は、日本全国に約4,200万人いるとされ、男性では40歳以上の2人に1人、女性では4人に1人がメタボリックシンドロームかその予備群であると報告されています 1)。 一方、変形性ひざ関節症も、ひざに過度の負担をかける肥満が大きな原因の一つです。肥満の人は、変形性ひざ関節症になるリスクが男性で3.9倍、女性で4.2倍と高くなります 2)。このように肥満は、循環器にも、運動器にも悪い影響を及ぼします。
「ひざの痛み」がある場合は、ひざが痛むのを避けるため体を動かす機会が少なくなります。そうした運動が不足する状態が体重増加を招き、生活習慣病や変形性ひざ関節症を引き起こすという悪循環を生じます。 あなたの「ひざの痛み」についてチェックしてみましょう。
1) 厚生労働省: 平成24年国民健康・栄養調査
2) 吉村典子: メタボリックシンドロームと変形性関節症 骨粗鬆症治療. 6(2):117-121,2007
運動は、脂肪を燃焼し、肥満を解消する効果だけでなく、血圧や糖代謝 3) 4)、および脂質代謝 5)を改善する効果があります。定期的に運動することは、高血圧や糖尿病、脂質異常症の改善にとっても重要です。
イキイキと運動することで、体重をコントロールし、生活習慣病や変形性ひざ関節症を改善・予防しましょう。
3) Dickinson, HO et al.: Lifestyle interventions to reduce raised blood pressure: a systematic review of randomized controlled trials. J Hypertens. 24(2):215-233, 2006
4) Yokoyama, H. et al.: Effect of aerobic exercise on plasma adiponectin levels and insulin resistance in type 2 diabetes. Diabetes Care. 27(7):1756-1758, 2004
5) 坂本静男: 運動によって増加するHDLコレステロール亜分画. 体育の科学. 54(1):32-37, 2004
身近にできる運動というと、ウォーキングやジョギングを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、これらの運動はひざに負担がかかるため、ひざに痛みがある人には難しいものです。ひざに負担をかけないような運動を行い、脂肪の燃焼を図りましょう。例えば、水中歩行は水の浮力により、歩くときにひざにかかる負担が軽減します。さらに水圧により関節が固定されるため、よりひざに負担が少なく運動をすることができます。
また、自転車やエアロバイクも臀部(お尻)で体重を支えるため、ひざに負担をかけずにできる運動です。 運動の効果には個人差があります。すぐに体重減少などの効果があらわれないこともありますが、継続することが大切です。
ひざの痛みを訴えて来られる患者さんの中には、高血圧や糖尿病を併発されている患者さんが少なくありません。そうした方々は、運動が必要とわかっていても、ひざの痛みのために出歩くことが億劫(おっくう)になり、引きこもりがちになります。
しかし、変形性ひざ関節症の治療をして、楽に歩けるようになると、行動が活発になります。その結果、減量に成功し、運動に取り組む方も増えます。こうした患者さんを見ていると、ひざの痛みを治すことは、歩けるようになるだけではなく、さらに全身の健康にもつながることだと感じます。
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